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左の套路練習について

はじめまして。
大阪分会のおくもとです。
梅津さん、プログ引き継ぎます。
今年に入り一人で鍛錬する時に左の套路を取り入れることにしました。
(通常行っているのを右として、その逆として左と表現しています)
今回はその気付きを書いていきたいと思います。
約10年前のことになります。蟷螂拳を習い始めて左の套路を練習しないことに疑問を持っていました。代表が仰るには『不得意な方を捨てて、得意な利き腕の方をさらに伸ばして行く。その方がたくさんのことを学べ、早く強くなれる』ことを仰っていました。
その時は、『なるほど』と納得し、左のことは忘れて今まで右の練習に励んできました。
そして、時は流れ、最近自分の中のバリエーションを増やしたいという思いが強くなり、左の套路を練習し始めました。
初め、身体に馴染んでいる七星の崩歩拳を選んで動いてみましたが、全然力が入らず、バランスも悪く、スピードも、キレもない、入門した頃のような状態になってました。繰り返し練習すると身体が徐々に慣れて少し動けるようになりましたが、力を伝達する動作(足から腰、腕、拳と力を伝える動作)ができず、まだまだ課題だらけです。
左の套路を練習して気づいたことは、以下の3点です。
①左の套路をしていたのに、自分では気づかないうちに、自然と右の套路に変わっていたことで、あまりにも自然な動きだったので、このような動きもありではないかなと思いました。右の套路、左の套路、右と左がミックスされた套路といろいろな変化も考えられるのではないか?この点についてはまだよく分からないため、これから練習する際にじっくり考えながら進めていこう。
②それから、左の套路の一部の型が右の套路より身体に馴染む技があることです。それほど練習していないにもかかわらず、すぐに動けるようになりました。このような型は右の套路のような雰囲気がしました。
③左の套路を練習すると身体の可動範囲が狭く、小さな動きになりがちで、少しずつ身体の可動範囲を広げるよう意識して練習しています。右の套路を練習するときに意識しなかった身体の使い方を考えながら練習するようになりました。
まだ練習を始めて僅かなため何が変わるのか現時点では分かりませんが、このまま練習を続けて行こうと思います。もし練習中、動きに変わったところが見つかったらお教え下さい。
よろしくお願いいたします。
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連三捶を科学的に考察する
こんばんは。
大阪分会の梅津です。
今回は「連三捶」について書きたいと思います。
■ 連三捶に湧いた疑問
単式練習の中では、連三捶を好んで練習しています。
未だ未熟なれど、練習すればするほど、底の見えない深さを感じて、ついつい熱中してしまいます。
しかし、つい最近まで、打ち出す拳がどうしても肩の高さ、もしくはそれより低くなりがちで、悩みの種でした。
その度に、島村先生から、
「連三捶で打ち出す拳は、敵の顔、鼻の下辺り(人中)を狙うつもりで。」
と指導を頂きました。
個人的には、思っているよりもだいぶ上を突く印象で、力の入れ方がとても難しく感じましたし、同時に、少しの疑問を抱くようになりました。
「なぜ顔を突くのだろう?」
敵の弱点を突くという意味で、顔を突くのは理解できます。
しかし、弱点は顔以外にもたくさんあるし、敵を制圧するという意味では身体を突いても良いはずです。
実践ではそういう場面も可能性としてあるでしょう。
ならば、なぜ連三捶は「顔を突く型」になっているのでしょうか。
中段や下段を三回突くパターンもあってもよいのに「顔を三回突く型」だけを練習する合理的な理由が気になりました。
そんな中で、偶然書店で手にした「格闘技の科学(著:吉服康郎)」という本に、ひとつの答えを見つけました。
■ 科学からみた突き
著者の吉服博士は本の中でまず「運動量=質量×速度」という式を、丁寧に解説してくださいます。
ここでの質量は、手や前腕、上腕、肩等、身体の各部位の総重量です。
同じ拳でも、全身を使って打つほど質量は増して、運動量(物体の勢い)は増加します。
速度は、手や前腕、上腕、肩等を相手へぶつけていく時の速度です。
同じ拳でも、速ければ速いほど、運動量は増加します。
さらに、ここに「攻撃対象と接触する時間」が関わってきます。
拳と相手が接触する時間が短い程、最大衝撃力は大きくなります。
吉服博士が言う所の「鋭いパンチ」になります。
逆に接触する時間が長い程、最大衝撃力は小さくなります。
但し、接触時間が長いという事は、その間相手に衝撃を与え続けている事になりますので、運動量自体が小さくなるわけではありません。
博士が言う所の「重いパンチ」になります。
■ 中国武術の合理性
前段を踏まえたうえで「顔を狙った場合」と「身体を狙った場合」で、連三捶にどのような違いがあるかを考えます。
本の中に、合理的な答えのひとつを見つける事が出来ました。
“顔面(顔)のように軽い目標には、胴体の勢いが伝わりきらないうちに顔面が動いてしまうので、腕、特に拳と前腕が高速になるほど、衝撃力が増えます。しかし動きにくくしかもへこんで「衝撃力を吸収する」ボディに対しては、拳だけ高速にしても有効とはかぎりません。(格闘技の科学 第一章 打撃の科学 16ページより抜粋)”
考慮すべき点は「拳との接触時間」です。
顔面に打ち込んだ場合、顔は首に支えられているのみで動きやすい為に「拳との接触時間」がより小さくなり、最大衝撃力が大きくなります。また拳を素早く打ち出すという連三捶の技術自体が、衝撃力を上げる事に繋がります。
ボディに打ち込んだ場合、ボディは顔よりも柔らかくへこむ事で「拳との接触時間」が長くなり、最大衝撃力が小さくなります。
威力を出すには、押し出すような重いパンチにすればよいでしょうが、それだと「連三捶」である意味がありません。
連三捶が「素早く拳を繰り出す事」も「顔面(人中)を狙う事」も全ては必然であり、合理的なものだったのです。
中国武術の緻密に計算された合理性の片鱗を見たようで、感動します。
余談ですが、流星趕月や連五捶の一撃目が身体ごと突く事の科学的根拠もみえたようで嬉しくなりました。
答えだけ見れば当たり前のように見えますし、実践を積まれている方であれば経験として既にご存知の内容であるかと思います。
ですが、僕は恥ずかしながら浅学の為、こうした「なんとなくそんな気がする」や「先生が仰っていたから」という知識を、科学的かつ合理的な根拠に基づいて「確信」出来た事が、とても嬉しく、また練習の際の意識も少し変わったように感じています。
少しでも皆様の参考にして頂ければ幸いです。
(大阪分会・梅津尚孝)
大阪分会の梅津です。
今回は「連三捶」について書きたいと思います。
■ 連三捶に湧いた疑問
単式練習の中では、連三捶を好んで練習しています。
未だ未熟なれど、練習すればするほど、底の見えない深さを感じて、ついつい熱中してしまいます。
しかし、つい最近まで、打ち出す拳がどうしても肩の高さ、もしくはそれより低くなりがちで、悩みの種でした。
その度に、島村先生から、
「連三捶で打ち出す拳は、敵の顔、鼻の下辺り(人中)を狙うつもりで。」
と指導を頂きました。
個人的には、思っているよりもだいぶ上を突く印象で、力の入れ方がとても難しく感じましたし、同時に、少しの疑問を抱くようになりました。
「なぜ顔を突くのだろう?」
敵の弱点を突くという意味で、顔を突くのは理解できます。
しかし、弱点は顔以外にもたくさんあるし、敵を制圧するという意味では身体を突いても良いはずです。
実践ではそういう場面も可能性としてあるでしょう。
ならば、なぜ連三捶は「顔を突く型」になっているのでしょうか。
中段や下段を三回突くパターンもあってもよいのに「顔を三回突く型」だけを練習する合理的な理由が気になりました。
そんな中で、偶然書店で手にした「格闘技の科学(著:吉服康郎)」という本に、ひとつの答えを見つけました。
■ 科学からみた突き
著者の吉服博士は本の中でまず「運動量=質量×速度」という式を、丁寧に解説してくださいます。
ここでの質量は、手や前腕、上腕、肩等、身体の各部位の総重量です。
同じ拳でも、全身を使って打つほど質量は増して、運動量(物体の勢い)は増加します。
速度は、手や前腕、上腕、肩等を相手へぶつけていく時の速度です。
同じ拳でも、速ければ速いほど、運動量は増加します。
さらに、ここに「攻撃対象と接触する時間」が関わってきます。
拳と相手が接触する時間が短い程、最大衝撃力は大きくなります。
吉服博士が言う所の「鋭いパンチ」になります。
逆に接触する時間が長い程、最大衝撃力は小さくなります。
但し、接触時間が長いという事は、その間相手に衝撃を与え続けている事になりますので、運動量自体が小さくなるわけではありません。
博士が言う所の「重いパンチ」になります。
■ 中国武術の合理性
前段を踏まえたうえで「顔を狙った場合」と「身体を狙った場合」で、連三捶にどのような違いがあるかを考えます。
本の中に、合理的な答えのひとつを見つける事が出来ました。
“顔面(顔)のように軽い目標には、胴体の勢いが伝わりきらないうちに顔面が動いてしまうので、腕、特に拳と前腕が高速になるほど、衝撃力が増えます。しかし動きにくくしかもへこんで「衝撃力を吸収する」ボディに対しては、拳だけ高速にしても有効とはかぎりません。(格闘技の科学 第一章 打撃の科学 16ページより抜粋)”
考慮すべき点は「拳との接触時間」です。
顔面に打ち込んだ場合、顔は首に支えられているのみで動きやすい為に「拳との接触時間」がより小さくなり、最大衝撃力が大きくなります。また拳を素早く打ち出すという連三捶の技術自体が、衝撃力を上げる事に繋がります。
ボディに打ち込んだ場合、ボディは顔よりも柔らかくへこむ事で「拳との接触時間」が長くなり、最大衝撃力が小さくなります。
威力を出すには、押し出すような重いパンチにすればよいでしょうが、それだと「連三捶」である意味がありません。
連三捶が「素早く拳を繰り出す事」も「顔面(人中)を狙う事」も全ては必然であり、合理的なものだったのです。
中国武術の緻密に計算された合理性の片鱗を見たようで、感動します。
余談ですが、流星趕月や連五捶の一撃目が身体ごと突く事の科学的根拠もみえたようで嬉しくなりました。
答えだけ見れば当たり前のように見えますし、実践を積まれている方であれば経験として既にご存知の内容であるかと思います。
ですが、僕は恥ずかしながら浅学の為、こうした「なんとなくそんな気がする」や「先生が仰っていたから」という知識を、科学的かつ合理的な根拠に基づいて「確信」出来た事が、とても嬉しく、また練習の際の意識も少し変わったように感じています。
少しでも皆様の参考にして頂ければ幸いです。
(大阪分会・梅津尚孝)